第二種電気工事士(学科)/一般問題
交流回路と三相交流:インピーダンス・力率・Y結線とΔ結線
実効値とリアクタンスから、インピーダンスと力率、三相のY結線・Δ結線と三相電力までを、例題つきで順に説明します。
交流の実効値と周波数とは?
家庭のコンセントの100Vは、向きと大きさが周期的に変わる正弦波交流の実効値です。実効値は、同じ抵抗で同じ熱を出す直流の電圧に置き換えた値で、最大値の1/√2倍(約0.707倍)にあたります。実効値100Vの交流の最大値は約141Vです。
1秒間に波をくり返す回数が周波数で、単位はHz(ヘルツ)です。国内の商用電源はおおむね東日本が50Hz、西日本が60Hzで、50Hzなら1回の波にかかる時間(周期)は1/50秒=20ミリ秒です。周波数の違いはコイルとコンデンサのはたらきに影響し、電動機の回転速度も変わります。
交流の計算で使う電圧・電流は、断りがなければ実効値です。回路計やクランプメータの交流の表示も、正弦波なら実効値を示すように作られています。
最大値Vmの正弦波では、実効値は Vm/√2 です。逆に実効値200Vの交流の最大値は約283Vで、電線や機器の絶縁はこの最大値にも耐えるように作られています。
コイルとコンデンサは交流で何が起きる?
コイルは電流の変化を妨げるはたらきをもち、交流に対して誘導性リアクタンス XL=2πfL〔Ω〕を示します。周波数fに比例するので、50Hzで20Ωのコイルは60Hzで24Ωになります。
コンデンサの容量性リアクタンスは XC=1/(2πfC)〔Ω〕で、周波数に反比例します。周波数が高いほど電流を通しやすく、直流は通しません。
電圧と電流の位相もずれます。抵抗だけなら電流と電圧は同相、コイルでは電流が電圧より90°遅れ、コンデンサでは90°進みます。この90°のずれがあるため、抵抗とリアクタンスは単純に足せず、直角三角形の関係で合成します。
インピーダンスと力率はどう求める?
抵抗Rとリアクタンスの直列回路の合成は、インピーダンス Z=√(R²+X²)〔Ω〕です。R、X、Zは、Rを底辺、Xを高さ、Zを斜辺とする直角三角形の3辺にあたります。
力率は、電源が送り出した電力のうち実際に消費される割合で、直列回路では cosθ=R/Z です。有効電力(消費電力)は P=VIcosθ で、電力を消費するのは抵抗だけなので P=I²R でも求められます。V×I は皮相電力と呼び、単位はV・Aです。
並列回路では、抵抗に流れる電流とリアクタンスに流れる電流が90°ずれるので、電源からの電流は √(IR²+IX²) です。並列回路の力率は IR÷I で求めます。
例題:RL直列回路の電流・力率・消費電力を求める
抵抗24Ωと誘導性リアクタンス7Ωを直列に接続し、交流100Vを加える。
- ① インピーダンス Z=√(24²+7²)=√625=25Ω
- ② 電流 I=100÷25=4A
- ③ 力率 cosθ=24÷25=0.96
- ④ 消費電力 P=I²R=4²×24=384W VIcosθ=100×4×0.96=384W と一致する
答え:電流4A、力率96%、消費電力384W
よくある間違い:Z=24+7=31Ω と足してしまうと電流は約3.2Aとなり誤りです。
Y結線とΔ結線は何が√3倍になる?
三相交流は、位相が120°ずつずれた3つの交流を3本の電線で送る方式で、電動機や業務用の空調機に使われます。負荷のつなぎ方にはY結線(スター結線)とΔ結線(デルタ結線)があります。
Y結線では、各相の負荷にかかる相電圧が線間電圧の1/√3倍になり、線電流と相電流は等しくなります。線間電圧200Vなら相電圧は約115.5Vです。
Δ結線では、各相の負荷に線間電圧がそのままかかり、線電流が相電流の√3倍になります。相電流20Aなら線電流は約34.6Aです。
覚え方は「Yは電圧が√3で割られ、Δは電流が√3倍になる」です。同じ抵抗をΔ結線からY結線につなぎ替えると、各相の電圧が1/√3倍になり、電力は電圧の2乗に比例して1/3倍になります。
例題:Y結線とΔ結線の線電流を比べる
1相の抵抗が40Ωの平衡三相負荷を、線間電圧200Vの電源にY結線とΔ結線でそれぞれ接続する。
- ① Y結線の相電圧 200÷√3≒115.5V
- ② Y結線の線電流 115.5÷40≒2.9A Y結線では線電流=相電流
- ③ Δ結線の相電流 200÷40=5A
- ④ Δ結線の線電流 5×√3≒8.7A
答え:Y結線 約2.9A、Δ結線 約8.7A(Δ結線はY結線の3倍)
よくある間違い:Δ結線の線電流を相電流の5Aのまま答えるのは、√3倍を掛け忘れた誤りです。
三相電力はどう計算する?
平衡三相負荷の消費電力は、1相分の電力の3倍です。線間電圧Vと線電流Iを使うと、結線の種類にかかわらず P=√3VIcosθ〔W〕で表せます。
抵抗の値が分かっているときは、各相の抵抗に流れる相電流を使って P=3I²R とする方法も確実です。このとき使うのは相電流で、Δ結線の線電流を代入すると3倍の値が出てしまいます。
式に出てくる√3と、1相分を3倍する「3」は別物です。√3は線間の量と相の量の比から来る係数で、線間電圧と線電流を使うときだけ現れます。相電圧と相電流を使うなら、P=3×相電圧×相電流×cosθ と書けます。
例題:三相電動機の消費電力を求める
三相200Vの電動機に線電流18Aが流れ、力率は0.8である。
- ① 式に当てはめる P=√3×200×18×0.8
- ② 計算 √3×2,880≒4,988W
答え:約5.0kW
よくある間違い:√3を掛け忘れると2.9kW、力率を掛け忘れると6.2kWとなり誤りです。
職場ではどう使う?
工場や店舗の動力設備は三相200Vが中心で、電動機の銘板に書かれた定格電流と力率から消費電力を見積もります。定格電流11A・力率0.85の三相200V電動機なら、√3×200×11×0.85≒3.2kWです。
力率が低いと、同じ電力を使うのに大きな電流が流れ、電線の電圧降下や損失が増えます。電動機の近くに力率改善用のコンデンサを入れると、コンデンサの進み電流がコイルの遅れ電流を打ち消し、電源から流れる電流が小さくなります。
三相電動機は、電源の3本の電線のうち2本を入れ替えると回転方向が逆になります。相の順番が入れ替わるためで、ポンプやファンを据え付けたあとの試運転で回転方向を確かめるのはこのためです。
試験ではどう問われる?
RL直列回路の電流・力率・消費電力と、Y結線・Δ結線の線電流や三相電力が中心です。誤りの選択肢は、RとXを単純に足した値、R÷Xを力率とした値、皮相電力VIをそのまま消費電力とした値などで作られます。
三相では、√3を掛け忘れた値、√3の代わりに3を掛けた値、Y結線とΔ結線の式を入れ替えた値が並びます。どちらの結線かを確かめてから、相電圧、相電流、線電流の順に1段ずつ進めると取り違えにくくなります。
位相の関係は文章の正誤で問われることがあり、「コンデンサの電流は遅れる」のように進みと遅れを入れ替えた記述が誤りの選択肢になります。
よくある質問
力率とは何ですか?
電源が送り出した電力(皮相電力)のうち、実際に消費される有効電力の割合です。抵抗とリアクタンスの直列回路では R÷Z で求めます。
Y結線とΔ結線はどちらが電流が大きい?
同じ抵抗を同じ電源につなぐと、Δ結線の線電流はY結線の3倍になります。消費電力も3倍です。
三相電力の√3はどこから来る?
線間電圧と相電圧(Y結線)、または線電流と相電流(Δ結線)の比が√3だからです。1相分の電力の3倍を線間の量で書き直すと √3VIcosθ になります。
読んだあとにやること
読んで分かった気になっても、手を動かすと止まります。この分野の練習問題で確かめてください。
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解説と例題は学習用に当サイトが作成したものです。例題の数値はすべてオリジナルで、過去の試験問題の本文・選択肢・数値は使用していません。 最新の法令と試験の内容は一般財団法人 電気技術者試験センターの公式情報で確認してください。